※この記事は2024年3月22日に最新の情報に更新されました。
2022年4月1日に改正される再エネ特措法。それに合わせて、2022年度内に出力制御の仕組みが大きく変わります。今回の改正でさらに多くの発電事業者が出力制御の対象になり、売電収入にも影響が出るため注意が必要です。
この記事では、従来までの出力制御と今回新設される経済的出力制御(オンライン代理制御)の仕組み、そして新たに出力制御の対象となる発電所について解説します。
最初に、出力制御について説明する。通常、太陽光発電所などで発電された電力は、電力会社を通して家庭や企業などといった電力消費者のもとに届けられる。
電力の需要量は時間帯や季節によって異なるが、電力は基本的に貯めることができない。そのため、電力会社は電力の供給量を常に需要量と一致させる必要がある。もしこの需給バランスが崩れると、エネルギーが無駄になるだけでなく、電力の周波数にも影響が出る。
周波数とは、電圧のプラスとマイナスが1秒間に何回入れ替わったかを表す数値のことだ。電力供給量が需要量を上回ると周波数が上昇し、少ないと周波数は低下する。
この周波数を一定に保たないと、電力消費者が使用する電子機器が故障する恐れがあるだけでなく、発電所と電力会社を繋ぐ送電線などの系統が故障を防ぐために自動的に接続解除され、大規模停電が発生する可能性がある。
そういった事態を防ぐために、電力が余りそうになると電力会社は発電事業者に対して「この時間帯は電気が余りそうなので売電(出力)できません」または「売電しても少ししか買えません」という要請を出す。これが出力制御だ。
出力制御は前述のようにグリーン電力が余った場合だけでなく、送電線などの系統の容量が上限を超えそうになった場合にも実施される。電力を安定して供給するためにも、出力制御は欠かすことができない。
出力制御は、太陽光発電所の条件ごとに適用されるルールが異なる。今回の変更点について説明する前に、3つのルールについて説明する。
まずは「旧ルール(30日ルール)」だ。FIT制度(固定価格買取制度)が導入された当初は、出力制御の対象を500kW以上の発電所に限定し、依頼可能日数の上限を年間30日とする「旧ルール(30日ルール)」が適用されていた。
なぜ30日間かというと、当時、出力制御は電力需要の少ない年末年始やGWといった時期(特異日)だけしか必要がないと考えられていたからだ。
この旧ルールでは、10kW以上500kW未満の発電所は出力制御の対象ではない。対象となる発電所が少なく、またほとんどのパワーコンディショナー(パワコン、PCS)が出力制御に対応していなかったため、出力制御に必要な機器の設置は任意だった。
しかし、再生可能エネルギーの導入量が増えるにつれて、年間30日という大まかなルールだけでは需給バランスの確実な調整が困難に。そこで2015年1月26日に再エネ特措法が改正され、依頼日数の上限が30日から360時間に変更されている。
これを「新ルール(360時間ルール)」という。新ルールは上限日数が時間単位に変わっただけでなく、旧ルールでは対象にならなかった10kW以上500kW以下の発電所も出力制御の対象になる。それに加え、インターネットでの出力制御に対応した機器(パワコン、出力制御ユニット、通信機器)の設置も義務化された。
従来の出力制御は、指示が出ると手動でパワコンのスイッチを切る必要があったが(手動制御、オフライン制御)、この頃よりインターネットを使い、指示が出ると遠隔でパワコンのスイッチを切ることができる自動制御(オンライン制御)が広く利用されるようになったからだ。
また、太陽光発電所の運転を開始するためには送電線などの系統の使用に関する申し込みが必要だが、この系統は容量に上限がある(接続可能量)。容量をオーバーすると電力の安定供給が不可能になるため、電力会社は申込量が接続可能量を上回った時点から、それ以降に申込をした発電設備に対しては「日数の上限なし」で出力制御が要請できるようになった。
このルールは国から指定を受けた電力会社だけが対象のため、「指定ルール」といわれる。対象となる発電所は新ルールと同じで、出力制御に対応した機器の設置も義務だ。
「旧ルール」「新ルール」「指定ルール」の3つが共存することになるが、どのルールが適用されるかは、管轄の電力会社や接続申込のタイミング、発電所の容量によって変わる。
東北電力や九州電力は、再エネ特措法が施行された段階で接続申込量が接続可能量を上回っていたため、旧ルールから新ルールではなく、そのまま指定ルールに移行している。3つのルールを簡単にまとめると、以下になる。運用の詳細については管轄の電力会社のHPをご確認いただきたい。
次に、今回変更される出力制御の2つのポイントについて解説する。まず1つが「経済的出力制御(オンライン代理制御)の実施」だ。出力制御には前述したように「手動制御」「自動制御」と2つの方法がある。
「手動制御」では、電力会社から出力制御の要請が出ると、担当者が実際に発電所に行ってパワコンの出力を手動で止めなければいけない。インターネットを使用しないため、手動制御はオフライン制御ともいわれる。
その一方「自動制御」は電力会社から要請があったとしても、担当者は発電所に行く必要はない。そのままインターネット上でパワコンのスイッチをオフにできる。自動制御はインターネットを使用するため、オンライン制御ともいわれる。
出力制御が実施される場合、前日までに電力会社から「この日のこの時間帯に出力制御しますよ」という要請が出る。しかし、出力制御は必ずその指示通りに行われるわけではない。当日の需給状況や天候を考慮したうえで、実施2時間前に改めてスケジュールが決定される。
下の図は、九州電力で実際にあった事例だ。4/25時点では出力制御を行うと指示があったが、4/26になって出力制御の実施がとりやめになっている。出力制御はスケジュール通りに行われることが多いが、このように時間が変更になったり中止になったりすることも少なくない。
もしスケジュールが変更されても、自動制御(オンライン制御)はインターネット上ですぐに対応できるが、手動制御(オフライン制御)の場合、スケジュールが変わってしまうと発電所に行って対応する必要が生じる。
そのため、手動制御では発電事業者の手間が増えるだけでなく、多額の売電ロスが発生していた。そこでこの問題を解決するために「経済的出力制御(オンライン代理制御)」が導入されることになった。
今回実施される「経済的出力制御(オンライン代理制御)」では、手動制御しかできない発電事業者(オフライン事業者)の分を、自動制御が可能な発電事業者(オンライン事業者)に代わりに行ってもらうことができる。
出力制御の要請が出ても、オフライン事業者はパワコンを切る必要がなく、オンライン事業者が出力制御を代わりに実施するため、発電を継続できる。しかし出力制御実施期間中、オフライン事業者は出力制御を受けたものとみなされるため、相当する売電収入を受け取ることができない。
これにより、出力制御の依頼が出てもオフライン事業者はわざわざ発電所に足を運ぶ必要がなくなる。また、出力制御中は売電収入が受け取れないが、これまでの問題であった売電ロスを最小化できるとされている。
2019年に九州電力が行った出力制御のデータをもとに、経済的出力制御を導入した場合のシミュレーションを行ったところ、17%もの売電ロスが改善できることが明らかになった。下の図は、経済的出力制御のスキームだ。代理で出力制御を行うオンライン事業者は、電力会社からその分の手数料を受け取ることができる。
制御を委託しているオフライン事業者は出力制御中の売電収入は受け取れないが、前述のようにタイムラグをなくすことができ、従来の出力制御時よりも売電収入の増加が見込める。オフライン事業者が追加で手数料を支払う必要もない。経済的出力制御は、2022年度内に開始される予定だ。
2つ目の変更点が「出力制御対象の拡大」だ。冒頭で出力制御には「旧ルール」「新ルール」「指定ルール」と3つのルールが共存しているとお伝えしたが、これまで出力制御の対象は「500kW以上の旧ルール事業者」と「10kW以上の指定ルール、新ルール事業者」だけだった。「10kW以上500kW未満の旧ルールの事業者」は対象ではなかったのだ。
しかし、今回の変更により「10kW以上500kW未満の旧ルール事業者」も出力制御の対象になる。出力制御の対象にならないのは、「10kW未満の発電事業者」だけということになるのだ(下表参照)。
ちなみに、今回新たに追加された「10kW以上500kW未満の旧ルール事業者」は旧ルールが適用されるため、出力制御に対応した機材の導入は不要だ。先ほど説明した、経済的出力制御が利用できる。
出力制御はこれまで、九州電力でしか実施されていなかったが、2022年に入って北海道電力、東北電力、四国電力、中国電力でも行われている。2022年6月時点では、中部電力・関西電力・東京電力では実施されていないが、今後、その3社でも出力制御が行われる可能性は十分に考えられる。太陽光発電所の導入を検討している法人はそういったリスクも把握しておくべきだ。
しろくま電力は太陽光発電所の適地探しから土地開発、資材調達、施工までを一気通貫で行っている。発電設備の導入にあたって、PPAモデル・自社所有型モデルともに対応可能だ。
しろくま電力で太陽光発電設備するメリットは以下の3点だ。
・大規模発電所など、数多くの発電所を施工した実績
・設置場所の課題をクリアし、発電量を増やす技術力
・日射量データとAIを駆使した適地探し
しろくま電力は、国内にある発電所の施工を数多く担当してきた。メガソーラーをはじめとする大規模発電所や、店舗の駐車場に設置するソーラーカーポートなど、施工実績が豊富だ。
土地開発から施工にいたるまで、ほぼ全ての業務を内製化する中で培った独自のノウハウを活かし、高品質の太陽光発電所を設置する。
参考:オンサイトPPAとは?オフサイトPPAとの違い、メリットデメリットをわかりやすく解説
参考:オフサイトPPAとは?オンサイトPPA・自己託送との違いをわかりやすく解説
2つ目のメリットが技術力の高さだ。しろくま電力は施工に加え、施工の研究や実験にも力を入れている。発電所の設計では「影のない3D設計」を実現。3D設計により、100m横の敷地に立った左の発電所よりも22%も発電量を増やすことに成功した。
また太陽光発電設備は、屋根上や遊休地はもちろん、水の上や遠隔地、駐車場にも設置できる。特に駐車場に設置するソーラーカーポートには強いこだわりがあり、一級建築士監修のもと、2年もの歳月をかけて改良を重ねてきた。
上図左側のように、従来のソーラーカーポートは4本足で、駐車や扉の開閉がしづらく、相場も高い。しかししろくま電力では、前方に足がない2本足タイプを開発。これによって駐車しやすく、扉の開け閉めが容易になった。
ソーラーカーポートの価格についても、資材の大量輸入や業務効率のいい工法の開発などにより、業界トップクラスの低価格で対応する。PPAモデルを活用すれば、初期費用0円でソーラーカーポートや太陽光発電設備を導入することもできる。
参考:【図解】ソーラーカーポートとは?価格相場や導入メリットデメリット、補助金情報を解説!
参考:しろくま電力「しろくまカーポート事業ページ」
しろくま電力には土地開発チームがあるため、オフサイトPPAモデルを行う場合、土地探しから土地開発、施工までを一貫して実施できる。
土地探しの際は、自社で開発した「再生可能エネルギー適地検索システム」を活用。日射量データや該当エリアの系統の空き容量、土地の情報などのデータを学習したAIが、152万に分割した日本の土地の中から発電所の適地を見つけだす。
しろくま電力では、豊富な実績と高い技術力を活かし、国内企業の脱炭素や電気料金の高騰リスク軽減を全力でサポートする。太陽光発電設備の導入(PPAモデルまたは自社所有型モデル)に関するお問い合わせやご相談は「太陽光発電設備の導入に関するお問い合わせフォーム」または下記のバナーから。