※この記事は2024年3月22日に最新の情報に更新されました。
2022年6月、日本で初めて「電力需給逼迫(ひっ迫)注意報」が発令された。2023年以降も、電力需給がひっ迫する可能性がある。電力需給がひっ迫すると、大規模停電だけでなく電気代高騰や電力会社の倒産リスクにもつながるため、注意が必要だ。
この記事では、電力需給ひっ迫がなぜ起こるのか、いつまで発生リスクがあるのか、そしてひっ迫した場合に法人がすべき対策はあるのかについて解説する。
電力需給ひっ迫とは、電気の需要量が供給量の上限ギリギリに迫っており、ほとんど電気が余っていない状態をさす。もし需要が供給を上回ると電気が行き渡らず、大規模停電が発生してしまう。
電力需給がひっ迫しているかについて、各電力会社はエリアごとに設けた「供給予備率」をもとに判断する。供給予備率とは、需要量に対して供給力にどれほど余裕があるかを示した割合のことだ。
例えば供給可能量が100で需要が80の場合、供給予備率は20%となる。供給予備率が8%以上あれば需給は安定しており、それ未満だとひっ迫の恐れがあるとして「電力需給ひっ迫注意報」や「電力需給ひっ迫警報」が発令される。
電力需給ひっ迫の恐れがある場合、前もって電力需給ひっ迫注意報や電力需給ひっ迫警報などの呼びかけが行われる。それぞれの違いを見ていく。
2日後の予備率が5%を切る恐れがある場合、電力需給ひっ迫準備情報が発令される。準備情報は一般送配電事業者が発表し、節電準備のお願いなど、注意喚起に止まる場合がほとんどだ。
電力需給ひっ迫注意報は、翌日または当日の供給予備率が5%を下回る恐れがある場合に発令される。準備情報とは違い、注意報を発表するのは経済産業省 資源エネルギー庁だ。
2022年6月、東京電力管轄エリアで発令されたのは電力需給ひっ迫注意報である。2022年6月27日の供給予備率の見込みは、16時〜16時30分が4.7%、16時30分〜17時の予備率が3.7%だった。政府の呼びかけもあり、6月30日に注意報は解除されている。
翌日または当日の供給予備率が3%を下回る恐れがある場合には、電力需給ひっ迫警報が発令される。公表するのは注意報と同じ、経済産業省 資源エネルギー庁だ。国民や法人に対して、より一層の節電を呼びかける。
国内では2022年3月22日に国内で初めて電力需給ひっ迫警報が発令された。原因は、3月16日に発生した福島県沖地震によって火力発電所が被災・稼働停止したこと、季節外れの寒波によって電気の需要量が増加したことだ。関東・東北地方合わせて約226万戸が停電する事態となったが、揚水発電所の運用や政府による節電の呼びかけなどが功を奏し、3月23日に警報は解除された。
これら電力需給ひっ迫の呼びかけをスケジュールでまとめると下図のようになる。
原則実施しないことになってはいるが、供給予備率が1%を切った場合は計画停電が実施される可能性もある。東日本大震災が発生した際には、1都8県を5グループに分け、2011年3月14日から28日までグループごとに計画停電が行われた。
電力需給のひっ迫は事前に予測できる。それでは「前もって電気を貯めておけばいいのでは?」「発電量を増やせばいいのでは?」と考えてしまいがちだが、現状の日本ではそれらができない背景がある。電力需給ひっ迫が発生する原因を見ていく。
電気の動きは、需要と供給を一致させる「同時同量の原則」のもとで成り立っている。電気には電圧や周波数があり、需要と供給が一致しないとこの数値が大きく変動してしまう。
もし需要と供給が大きく変動した場合、送電線などの電力系統がトラブルを防ぐために自動的に接続を解除し、大規模停電が発生してしまうのである。電気はそれ単体では蓄えることができないため、電気を蓄えて必要なときに取り出す仕組みが必要だ。日本では蓄電手段として揚水発電が主流だが、発電コストが高いなどの課題がある。
2つ目の原因が、電気の供給力の低下だ。2016年の電力小売全面自由化により、大手電力会社は新電力と競争せざるを得ない状況となった。そのため発電効率の悪い、老朽化の進んだ火力発電所の休廃止が相次いでいる。下図のように、年間平均約400万kWもの火力発電所が姿を消しているのだ。
電力需給ひっ迫を防ぐために、老朽化の進んだ火力発電所を再稼働させる動きもあるが、燃料費高騰で発電コストが上がる今、得策とは言いがたい。さらに2022年12月1〜12日の間に、故障などで火力発電所が稼働停止するケースが200件に上るなど、トラブルも増えている。需給ひっ迫リスクを確実に下げるには、別の対策を講じる必要があるのだ。
地域間で電気を送り合う電力融通も行われてはいる。しかし地域間を繋ぐ送電線の容量は小さく、大容量の電気を一気に送ることはできない。本州〜北海道間は特に小規模で、わずか90万kW分ほどである。
北海道全土の1日あたりの電力需要量は約489万kWのため、北海道全土に電気を届けるには課題が残されている。2018年に北海道胆振東部地震が発生した際も、電気を融通できず大規模停電が発生してしまった。
3つ目の原因として考えられるのは電力需要の増加だ。新型コロナウイルス感染症の影響で自宅で過ごす人が増えたこと、さらに経済活動を再開する動きが活発化したことで電気の需要が急増している。
2022年6月に関東エリアで電力需給がひっ迫した際も、電力需要の急増が大きな一因だった。その時期にしては珍しく記録的な猛暑が続いたことで、6月の需要量としては東日本大震災以降最大の数値を記録したのだ。
通常、7〜9月や12〜3月は電力がひっ迫しないよう、多くの発電所が運転可能だ。しかしそれ以外の時期は多くの火力発電所で定期点検・補修が行われており、6月時点も通常よりも供給可能量が少なかった。このようにメンテナンスが行われる時期に需要が増えると、需給がひっ迫することになってしまうのだ。
2022年の冬と夏に電力需給がひっ迫したが、2023年1〜2月にかけても電力需給がひっ迫する可能性がある。
火力発電の稼働増加や、電力を公募したことで予備率は改善された。しかし2022年度の冬は去年同様、全国的に厳しい寒さになるといわれている。そのため予備の電気を確保しても、想定より需要量が増える可能性がある。
2022年度冬の電力需給ひっ迫について、詳しい解説は以下の記事を参照いただきたい。
関連記事:なぜ2022年度の冬も電力需給はひっ迫するのか?電気代高騰・倒産に備えて企業がすべき対策を解説!
電力需給ひっ迫や電力不足は、2023年に入っても発生するリスクが十分に考えられる。電気の供給量を増やす取り組みが行われているものの、2023年7〜9月における東京エリアの予備率は3%台しかないのだ。
それ以外のエリアの予備率や、なぜ2023年に電力需給がひっ迫する可能性があるのかについては下記の記事で解説している。
関連記事:2023年も電力需給のひっ迫・電気代の値上げは続く!理由と対策を解説
電力需給ひっ迫は今後も発生する恐れがあるが、需給バランスの改善に向けた動きも行われている。
蓄電の手段として注目を浴びているのが「系統用蓄電池」と「水電解装置」だ。系統用蓄電池とは、電力系統や再生可能エネルギー発電所などに接続する蓄電池のこと(下図参照)。これがあれば、効率よく蓄電・放電が可能となる。
水電解装置とは水を電気分解して水素エネルギーに変えるものだ。これらの導入量が増えれば、それだけ電力需給に余裕を持たせることができる。特に北海道は他の地域と違い、地域をまたいだ電力の供給が難しい。一方で太陽光発電などの導入量が多いことから、系統用蓄電池の導入が積極的に進められている。
電気の供給については、太陽光や風力といった再生可能エネルギーがカギを握っている。これらの発電量がさらに増えれば、化石燃料に依存せずに電気を作ることが可能だ。エネルギーを自国で生産できるため、燃料費を気にする必要がなくなる。
環境省が発表した「我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル」によると、2020年の日本における発電量は火力発電など全て含めて10,013億kWh/年だったが、太陽光発電や風力発電の導入量を増やせば26,186億kWh/年まで増やせるとされている。
再生可能エネルギーの導入を進めて発電量を増やし、余った電気を蓄える仕組みを構築できれば、需給ひっ迫の課題は解決に向けて大きく前進できるのだ。
電力需給がひっ迫すると、大規模停電が発生するだけでなく、電気代高騰や新電力の倒産リスクも高まるので要注意だ。新電力のほとんどは自社で発電所を持っていない。下図のようにJEPX(日本卸電力取引所)から買った電気を需要家に提供している。
JEPXが販売する電気の価格を市場価格というが、この取引価格は「燃料費」「気象条件」「需給状況」によって30分ごとに変動する。電力需給ひっ迫が起きた場合、高値をつける時間帯が出てくる可能性があるのだ。それだけ、電気の仕入れコストが値上がりすることになる。
しかし大半の新電力が提供する電気料金プランは、仕入れ値をもとに決められたものではない。下図は一般的な料金プランの内訳だが、この中でも毎月変動するのは燃料費調整額だけで、それ以外は価格や単価が同一なのだ。
燃料費調整額とは、燃料費の変動分を補うために設けられた料金をさす。過去3ヶ月間の燃料費をもとに毎月変動する仕組みだが、市場価格が高値をつける時間帯がある今、「値上げしても仕入れコストの方が高かった」という事態が続いている。
しかし一般的なプランの場合、電気代を値上げしようとしても、料金の仕組みが市場価格に基づいていないため、正確な値上げ幅の見極めが難しい。
このプランを提供する多くの新電力がここに苦戦し、1.5〜2倍の大幅な値上げに踏み切ったり、倒産や事業撤退など廃業を選択するケースが増えている。2022年11月28日時点で、新電力は全体の約21%である146社が倒産・撤退しているのだ。
2022年度の冬や2023年に電力需給のひっ迫が発生した場合、さらに一般的な料金プランは値上げが実施される可能性がある。しかし需給ひっ迫でどれだけ市場価格が高値をつけるのかは不透明だ。値上げをしようにも値上げ幅の見極めはさらに厳しくなるだろう。
そのため、今後も大幅な値上げの実施や、新電力の倒産・撤退は増加する可能性があるため注意が必要だ。
関連記事:【2023年最新】なぜ電気代は高い?値上げの理由と安くする方法を解説
電気代には一般的な料金プランに加えて市場連動型プランというものがある。この2つのプランの違いは住宅ローンのようなものだ。一般的な料金プランの電気代は固定だが多少割高であり、市場連動型プランは変動するが、平均すると安くなる可能性がある。市場連動型プランの内訳は以下だ。
市場連動型プランは、JEPX(日本卸取引所)が販売する電気の市場価格に基づいて電力量料金、つまり電気代の単価が決まる仕組みだ。市場価格は30分ごとに変動するため、それに合わせて単価も変わる。市場価格が高くなる場合は割高になるが、安くなる場合には単価が下がるのだ。
「市場価格が高値をつける時間帯が出るのなら、このプランは割高になるのではないの?」と考える方もいるのではないだろうか。確かに市場価格が高値をつけると、その時間帯の電気代の単価は高くなる可能性がある。
しかし先述したように市場価格は「燃料費」「天候状況」「電力の需給状況」の3つの条件をもとに30分おきに変動する仕組みである。
もし晴れて太陽光発電の導入量が増えれば、市場価格は0.01円/kWhになることもあるのだ。事実、2022年11月27日の12:00の市場価格は0.01円/kWhを記録した。ひっ迫が起きれば高騰するリスクはあるが、2009年度から2022年度までの市場価格の平均を見ると、0.01円/kWh~30円未満/kWhが95%を占めている。
そして市場価格が下がった場合、一般的な料金プランでは単価が変動しないが、市場連動型プランであれば下落メリットを享受できるのだ。以下は二つのプランの価格のイメージ図である。
また、市場連動型プランは市場価格に経費が上乗せされた価格が電気代になるため、電力会社がいきなり固定単価を1.5〜2倍に引き上げたり、突然倒産・撤退したりするリスクがほとんどゼロなのだ。
電気代の急激かつ不透明な高騰リスクを軽減でき、電力会社の倒産や撤退を気にせず電気を使用できる。電力需給のひっ迫に備えて「電気代高騰・電力会社の倒産リスクを軽減したい」法人は市場連動型プランを検討すべきだ。
ちなみに2022年9月1日以降の最終保障供給の料金体系は、市場連動型プランの下限料金があるバージョンである。下図のように、市場価格が下がっても最低料金より安くなることはないので要注意だ。
関連記事:【図解】市場連動型プランとは?最終保障供給より安い?メリットデメリットをわかりやすく解説!
関連記事:電力の最終保障供給とは?2022年9月から大幅値上げ!制度の概要と高騰対策を解説!
しろくま電力では、高圧・特別高圧の法人向けに市場連動型プランを提供している。新電力ネットが実施した販売量増加率ランキングでは第3位を獲得。2022〜2023年にかけてお問合せ件数は約40倍に増加している(出典はこちら)。
しろくま電力では、翌日の市場価格を、毎日午前中にメールで共有。これによって、市場価格の高騰が見込まれる際には、従業員に在宅勤務を促したり、工場の稼働を減らしたりでき、電気代の節約をサポートする。個別での相談にも対応可能だ。
電気を切り替えるだけで脱炭素ができるのも、しろくま電力の強みだ。私たちが提供する電気は、実質再生可能エネルギー100%であり、CO2を一切排出しない。カーボンニュートラルの実現もサポートする。
以下は、実際にしろくま電力の市場連動型プランを導入した企業様の声だ。
お見積もりについては、他の電力会社や最終保障供給を契約した場合の電気代との比較もできる(比較を希望した法人のみ)。年間のお見積もりだけでなく、毎月の電気代を算出するため月ごとの料金比較も可能だ。以下は、レポートとお見積書の例である。
お見積もりは「しろくま電力の市場連動型プランページ」または下記バナーからすぐに完了できる。市場連動型プランに切り替えると電気代がどうなるのか、他社と比較して安くなるのかを試算したい方はぜひお申し込みを。お急ぎの見積もり依頼にも対応できる。契約上のご相談や不明点などにも対応可能だ。
また、しろくま電力では「市場連動型プランはどうしても不安だ」という法人に向けて「固定単価型プラン」も提供している。このプランは大手と違って「3〜6ヶ月前の燃料費の平均価格」でなく「前月の市場価格」を1kWhあたりの単価に落とし込むため、不透明な値上げリスクがない。
さらに、以下の2点により電気代が大手電力会社よりも「最大25%安くなる」可能性がある。
①基本料金と電力量料金が大手電力会社より安い
②燃料費調整額でなく、電源調達調整費を電気代に組み込んでいる
①について、しろくま電力では電気代の基本料金と電力量料金を大手電力会社よりも低くなるように設定した。そのため月々の電気代を安く抑えることができる。
②については、大手電力や新電力が電気代に燃料費調整額(化石燃料費の変動分だけ)を組み込む一方、しろくまプランでは電源調達調整費を含んでいる。電源調達調整費は、先述したJEPXの市場価格を1kWhあたりの単価に落とし込んだものだ。
燃料費調整額は化石燃料だけを価格に反映するため、燃料費が高騰すると燃料費調整額も上がってしまう。2020~2022年にかけて電気代が高騰したが、この原因は燃料費調整額だった。しかし市場価格は前述したように燃料費以外も参考にされるため、電気代の高騰リスクを軽減できる(当然、電源調達調整費が高騰するリスクもある)。
このように内訳を変更することで、大手電力よりも最大25%安くすることが可能となった。ちなみに市場連動型プランと固定単価型の価格の違いは以下である。
・市場連動型プランは電力量料金が市場価格を元に決まる ・固定単価型プランは従来の電力プランと同じく電力量料金は一定。 ・市場価格は賢く電気を使えば電気代が大幅に安くなる。しかし市場価格高騰時はリスクもある ・固定単価型プランは市場連動型よりも市場価格の影響を受けづらい。安心して電気代を下げたい。 |
「市場連動型だと不安だ」「安心して安い電気代を使いたい」という企業様は、ぜひ下記からお見積もりを。