最終保障供給とは?制度の仕組みや料金内容、注意点をわかりやすく解説!
※この記事は2025年4月24日に最新の情報に更新されました。
法人の中には、通常の電力会社ではなく「最終保障供給」を契約し、電気を使用しているケースがあるのをご存知だろうか? この最終保障供給だが、仕組みが代わったことで電気料金が大幅に値上がりしている。
そこでこの記事では、最終保障供給とはどういう制度なのかをわかりやすく説明し、2022年9月から料金体系はどう変わったのか、今後どのように値上がりするのか、それに対して企業はどう対策すべきなのか、図を交えながら解説していく。
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この記事でわかること ・最終保障供給ってなに?どういう法人が契約できるの? |
目次 最終保障供給とは、電力難民向けのセーフティネットのこと 最終保障供給の料金はいくらくらい? |
最終保障供給とは、電力難民向けのセーフティネットのこと
最終保障供給とは、なんらかのトラブルで電力会社と契約していない法人でも、常に電力供給を受けられる制度のことだ。
例えば、契約中の小売電気事業者が倒産や撤退などで契約解除することになったものの、次の契約先が見つからない場合に最終保障供給を選択できる。
この制度により、法人は小売電気事業者が急に撤退したとしても、つねに電気を利用することが可能だ。
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最終保障供給の仕組みとは?
まず最終保障供給で知っておくべきは、電気が届けられるまでの仕組みである。
通常、私たちが使用する電気は上図のように、発電事業者がつくった電気を、一般送配電事業者が送電線を通して運び、小売電気事業者を介して需要家に届けられている。
しかし最終保障供給は違う。最終保障供給の場合は電力会社(小売電気事業者)との契約がないため、電気は一般送配電事業者から需要家へと直接届けられるのだ。
最終保障供給を受けるためには、電力供給地点を管轄する、以下の一般送配電事業者10社のいずれかに最終保障供給契約を申し込む必要がある。
- 北海道電力ネットワーク株式会社
- 東北電力ネットワーク株式会社
- 東京電力パワーグリッド株式会社
- 中部電力パワーグリッド株式会社
- 北陸電力送配電株式会社
- 関西電力送配電株式会社
- 中国電力ネットワーク株式会社
- 四国電力送配電株式会社
- 九州電力送配電株式会社
- 沖縄電力株式会社
最終保障供給では予備の電気を供給するため、通常の電気代よりも割高になるが、この制度がある限り事業者が利用する電気が止まる心配はない。
最終保障供給の契約対象と契約期間は?
最終保障供給は全ての法人が契約できるわけではない。契約対象となるのは、高圧(50kW〜2,000kW)や特別高圧(2,000kW以上)の法人である。一般家庭や店舗といった低圧の電力需要家(50kW未満)は対象外だ。
最終保障供給の契約期間は原則1年以内である。一般送配電事業者としては契約を増やしたくないため、電力契約でき次第、契約解除が可能だ。しかし、契約期間内に新しい電力会社が見つからなかった場合は延長することができる。
最終保障供給制度が始まった理由は「新電力の参入」
ここまで最終保障供給の概要を解説したが、それでは、なぜ最終保障供給という制度がスタートしたのだろうか?
最終保障供給ができたきっかけは、2000〜2016年にかけて進められた「電力自由化」だ。これにより、新電力と言われる多くの民間企業が「大手電力会社よりも電気代が安い」ことを売りに電力小売業界に新規参入した。
しかし、2022年にロシア・ウクライナ問題や円安ドル高の進行などの事態が発生。これによって燃料費が過去最高値を記録し、多くの電力会社では仕入れ値が売り値を上回った。
そして「電気を売れば売るだけ赤字になる」事態となった結果、約3割近い新電力が倒産や事業撤退を余儀なくされた。
もし電力会社との契約が切れた場合、その法人は電気を使用できなくなってしまう。そういった最悪の事態を防ぐためにスタートしたのが最終保障供給である。
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最終保障供給の詳しい条件は供給約款に記載されている
ここまで最終保障供給の概要と、電力供給の仕組みについて解説してきた。
最終保障供給の契約条件や電気代、申し込み方法についてはこの記事でも解説するが、ちゃんとした情報を知りたい方は、それぞれの一般送配電事業者が公開している「最終保障供給約款」を参考にすることをおすすめする。
この約款と似たものとして「特定小売供給約款」や「選択約款」、「託送供給等約款」というものもあるため、間違えないようにご注意いただきたい。
最終保障供給の料金はいくらくらい?
ここまで、最終保障供給の概要と設立された背景について解説した。それでは最終保障供給を契約した場合、電気代はどれくらいになるのだろうか? 次に最終保障供給の料金について詳しく見ていく。
最終保障供給は2022年9月から値上がりしている
前提として、2022年9月より最終保障供給は料金体系が変わり、大幅な値上げが実施されていることを知っておこう。2022年8月31日まで、最終保障供給の料金内訳は以下のようになっていた。
従来の最終保障供給料金 = 基本料金 + 電力量料金(従量料金±燃料費調整額)+ 再エネ賦課金
しかし2022年9月より、最終保障供給料金は以下のように変更されている。
新しい最終保障供給料金 =基本料金+電力量料金(従量料金±燃料費調整額±市場価格調整額)+再エネ賦課金
もともと最終保障供給料金の内訳は、小売電気事業者が提供する通常の電力プランと同じだった。違うのは電気代で、予備用の電源を使うことから「大手電力会社の電気代の1.2倍」になるよう割高に設定されていた。
しかし2022年9月より、最終保障供給料金に市場価格も反映されている。市場価格とはJEPX(日本卸電力取引所)という、「電力を扱う市場」で購入した電気の価格のことだ。JEPX(日本卸電力取引所)では1日を48コマに分けて電気を取引している。そのため市場価格は30分ごとに変動する。
このように市場価格が反映されることになった結果、最終保障供給料金は以下のように変更している。
新しい最終保障供給では「最低料金」を大手電力会社の電気料金の1.2倍とし、市場価格が各送配電事業者が定める平均額を上回った場合、最低料金にプラスされることになったのだ。
市場価格調整額とは、市場価格の変動分を電気代に反映したものである。市場価格調整額の新設により、最終保障供給の料金は大幅に上がっている。
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最終保障供給の料金はいくら?
次に具体的な最終保障供給料金について解説する。
最終保障供給には契約メニューがいくつかあるが(東京電力エリアで見ると「最終保障電力A」「最終保障電力B」「最終保障農事用電力」「最終保障予備電力」)、ここでは「最終保障電力A」の電気代について見ていく。
基本料金 |
電力量料金 |
|
2022/4/1〜2023/3/31 |
2,057円 |
夏季:20.04円 |
2023/4/1〜2024/3/31 |
2,177.24円 |
夏季:20.04円 |
2025/4/1〜 |
2,268円 |
夏季:20.04円 |
上図は最終保障電力Aのうち、供給電圧が6,000Vの場合の最終保障供給料金の推移をまとめたものだ。こうしてみると基本料金と電力量料金だけでも値上がりが続いていることがわかる。
最終保障供給の場合、ここに市場価格調整項が加わることになるが、東京電力パワーグリッドが発表している市場価格調整単価を見てみると「0円/kWh〜17.25円/kWh」と、月によって差が非常に大きい。
2022年7月21日〜8月20日の市場価格をもとにすると、市場価格調整項は13.38円となるが、これだけでも最終保障供給料金は54%も値上がりすることとなる。
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なぜ2022年9月に最終保障供給は値上げしたのか?
ここまで最終保障供給の電気代が値上がりしたと伝えたが、なぜ値上がりすることになったのだろうか?
これは2022年以降、最終保障供給の契約件数が激増したからである。下図のように、相次ぐ新電力の撤退で、最終保障供給の契約件数は2021年11月時点で455件だったが、2022年10月には45,871件まで増加したのだ。
(出典:経済産業省 電力・ガス取引等監視委員会「令和5年2月1日時点における最終保障供給契約件数を公表いたしました」)
約3割の新電力が倒産したのだから、契約件数が増えるのも仕方がないように思える。しかし、この中には契約中の小売電気事業者が倒産していないにも関わらず、最終保障供給と契約する法人もいた。なぜ契約中の電力会社が倒産していないのに、わざわざ電気代が割高な最終保障供給を選ぶ法人が現れたのか?
それは「契約している電力会社よりも最終保障供給の電気代の方が安い」というケースが発生したからだ。
先述したように、以前まで最終保障供給の電気料金は「各エリアの大手電力会社標準プランの1.2倍」と定められていた。これはかなり割高な数字だが、燃料費高騰によって多くの電力会社が赤字を取り戻そうと値上げした結果、「通常の電気代よりも最終保障供給の方が安い」ケースが増えたのだ。
当然、大手電力会社としても燃料費高騰のダメージが大きいため、基本料金や電力量料金といった燃料費調整額以外の部分を値上げしたいところだ。しかし大手電力会社は国の認可がないと電気代を上げることができない。
そこで大手各社は新規受付停止という判断に踏み切り、その結果、大手の次に電気代が安い最終保障供給を申請する法人が増えたのである。
しかし、最終保障供給の本来の目的は「電力会社と契約できない法人を救うためのセーフティーネット」だ。
この事態を受けて経済産業省は「現状の最終保障供給は救済措置としての制度趣旨に背く」として、最終保障供給の料金見直しを決定。その結果、市場価格を反映するために市場価格調整額が追加され、最終保障供給も大幅に値上がりしたのである。
ちなみに2022年10月以降は値上げの影響や、燃料費の高騰が落ち着いたことから契約件数が減少。2023年2月には39,170件、2023年9月には11,543件まで契約件数が減り、2024年8月には3,537件まで契約数は減っている。
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今後も最終保障供給料金が値上がりする可能性は高い
2022年9月に最終保障供給料金が値上がりしたことと、その背景を解説した。2022年9月以降も単価が上がっていることを説明したが、それは大手電力会社が電気代を値上げしているからだ。
特に2023年6月に大手電力が値上げしたことは大きなニュースとなったが、この原因は燃料費の高騰である。この影響で発電コストが上がり、売上を上回る事態となったのだ。
この燃料費高騰の問題だが、主な原因である「ロシア・ウクライナ問題」や「円安の急激な進行」は解決の見通しがついていない。2025年現在、燃料費は多少下がったものの高止まりが続いており、今後も情勢次第では燃料費が高騰する可能性は十分に考えられるのだ。
もしそうなった場合、大手電力はさらに値上げをする必要が生じる。そして大手電力が値上げした場合、最低保障供給料金も値上がりするため要注意だ。
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最終保障供給の申し込み方法とは
ここまで最終保障供給の危険性について解説してきた。しかし法人によっては契約する場合も考えられるため、ここからは最終保障供給の申し込み方法を説明する。
最終保障供給の申し込みについては、各エリアの一般送配電事業者に問い合わせる必要がある。そこで「電力需要地点の確認」や「供給条件」、「契約種別および料金」について合意を得られれば契約締結に進む。
最終保障供給の問い合わせ、申し込み先
各エリアの最終保障供給の申し込みや問い合わせ先については「経済産業省のニュースリリース」を参考にしていただきたい。それぞれの一般送配電事業者の公式サイトは以下になる。
- 北海道電力管内:ほくでんネットワーク
- 東北電力管内:東北電力ネットワーク
- 東京電力管内:東京電力パワーグリッド
- 中部電力管内:中部電力パワーグリッド
- 北陸電力管内:北陸電力送配電
- 関西電力管内:関西電力送配電
- 中国電力管内:中国電力ネットワーク
- 四国電力管内:四国電力送配電
- 九州電力管内:九州電力送配電
- 沖縄電力管内:沖縄電力
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今後は自社に合った電力プランを選ぶことが大切
ここまで最終保障供給について解説してきた。現在も最終保障供給は契約することができるが、電気代がかなり高くなってしまうため、あまり得策とは言えないのが現状だ。さらに今は、かつてのように新電力が新規受付を停止しているケースも少ないため、電力会社を選ぶことができる。
そのため法人は、最終保障供給でなく、自社に合った電力会社・電力プランを選び、電気代のコストパフォーマンスを高めるといいだろう。
例えば、
|
など、法人によって選ぶべき電力プランは異なるのである。
現在、大手電力あるいは新電力が提供する「法人向け電力プラン」を契約中または検討中の法人が多いのではないだろうか。実はこのプラン、法人によって多少単価に違いがあるものの、基本的にはどの法人に対しても電気代の仕組みは同じである。
「大手電力=安心」というイメージがあったり、現状から電力プランを見直すのは怖い、と感じるかもしれない。だがこれからは「自社にあった電力プランを選んで効率よく電気代を下げていく」取り組みが非常に重要なのである。
電力会社によっては「プランを会社ごとにカスタマイズできる」「適切な電力プランを提案してくれる」会社もあるため、電力会社選びが面倒な場合は、こうした法人から見積もりをとるのも一つの手だろう。
<業界トップクラスのプラン数!電気代を45%削減した例も>
御社に最適なプランで電気代・CO2を削減しよう
先述したように、多くの新電力には倒産リスクがあるが、しろくま電力は電力事業以外にも、系統用蓄電池やPPAモデルなど、多くの再生可能エネルギービジネスを手掛けており、そのどれもで収益を上げている。今後も継続して成長する見込みで、倒産リスクは低いといえるだろう。
そして「しろくま電力」では、高圧・特別高圧の電力を使用する法人向けに電力プランを提供している。しろくま電力の強みは「電気代の安さ」と「業界トップクラスのプラン数」だ。
電気代が大手電力より安いのはもちろん、「電気代をとにかく安くしたいから市場連動型プラン」「価格の安定性も重視したいから燃調リンクプラン」など、ニーズに合わせて電力プランを選ぶことができる。中には電気代を45%(1.5億円)削減したプランもある。プランをカスタマイズし、御社だけの電力プランを作ることも可能だ。
以下はしろくま電力を導入する主な企業・自治体である。
しろくま電力は、入札制(価格が安い場合に導入が決まる)を実施する数多くの自治体に対しても電力供給を行っている。多くの法人からも低価格であることが好評で、契約更新率は92%を超えた。
また、しろくま電力の電気は全てCO2を一切排出しない実質再生可能エネルギーだ。電気を切り替えるだけで御社のCO2削減量を減らすことができる。
見積もりは「複数のプランの電気代の提示」や「現在の契約先との電気代・CO2削減量の比較」にも対応している。「どれがいいかわからない」法人にはこちらからプランを提案することも可能だ。
見積もりだけでなく「プランについて説明してほしい」「なぜ安いのか、本当に倒産しないか知りたい」といった面談も行っている。切り替えを検討中でなくとも、気軽にお問い合わせいただきたい。
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