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【2026年最新】中長期取引市場とは?容量市場との違いと法人の電気料金への影響をわかりやすく解説

作成者: しろくまぱわー編集部|2026/08/04 8:32

中長期取引市場とは、小売電気事業者(電力会社)が、数年後に必要となる電気をあらかじめ買っておくことができる、電力の新しい取引市場のことである。

今、多くの電力会社はスポット市場という取引市場から電力を仕入れているが、この市場で取引される電気の価格は変動しやすいというデメリットがあった。そこで私たちの電気代の変動リスクを抑えるためにも、前もって電気を予約できる「中長期取引市場」が注目を浴びている。中長期取引市場は2028年に取引開始する予定だ。

この記事では、中長期取引市場とは何か、設立が検討される背景の詳細、具体的な取引の内容など、現時点でわかっていることをわかりやすく解説していく。

この記事でわかること

・中長期取引市場とはどんな制度か?

・kWh確保義務では何を確保する必要があるのか?

・容量市場とは何が違うのか?

・自社の電気料金にどう影響するのか?



中長期取引市場とは、数年先の電力を確保する新しい市場のこと

結論をまとめると

中長期取引市場とは、電力会社が数年後に使う電気を、あらかじめ予約できる新しい取引市場のことだ。2028年度に取引が始まる予定で、細かいルールは今も話し合いが続いている。

中長期取引市場とは、電力会社が数年後に需要家に提供する電気を、あらかじめ予約しておくことができる新しい取引市場である。買い手である電力会社は、1年後や3年後に使いたい電気を、前もって電気の売り手である「発電事業者」と取引できるのだ。

中長期取引市場の必要性に関しては、経済産業省を中心に2025年ごろから議論されるようになった。現在は2028年の取引開始を目指し、制度に関する議論が進められている。

 

中長期取引市場の設立背景は、短期市場への依存と新電力の撤退

結論をまとめると

電力会社の多くが、価格が変動しやすいスポット市場から電気を仕入れていた。そのため電気の価格が急に上がると経営が苦しくなり、実際に新電力が事業をやめる事態が相次いだ。これが中長期取引市場を作るきっかけになっている。

数年後に必要な電気を前もって押さえる「中長期取引市場」。では、なぜ今になって経済産業省はこの市場の設立に動いているのだろうか。

この背景としてあるのが、多くの電力会社が短期市場に依存していること、またこれによって多くの新電力が倒産した過去があるからだ。ここからは、中長期取引市場の設立の背景を解説していく。

 

小売電気事業者は電力調達の一部をスポット市場に依存している

まず、前提として多くの新電力(新興の電力会社)は自社の発電所を持っていない。以下のように、JEPX(日本卸電力取引所)と呼ばれる電力の卸市場から電気を仕入れ、それを需要家に供給している。

このJEPXだが、電気を取引できる市場はいくつか存在する。例えば、数週間から数年後の電気を取引する「先渡市場」、翌日に必要な電気を30分単位で取引する「スポット市場」、当日の過不足を微調整する「時間前市場」などだ。

これらの取引のうち、電気代が安定しやすいのは「先渡市場」である。逆に不安定になりやすいのが30分ごとに価格が変動する「スポット市場」だ。しかし下図のように、現在の日本の電力会社は価格変動リスクが高い「スポット市場」に依存している。

(出典:JEPX「事業報告書」

なぜスポット市場に依存するのか。それはこの市場が最も取引が成立しやすいからである。数週間、数年後に必要な電力量よりも、明日必要となる電力量の方が見通しを立てやすいため、どうしてもスポット取引に偏ってしまうのである。

関連記事:【図解】JEPXとは?取引の仕組みや市場価格の決まり方をわかりやすく解説!

 

2022年のスポット価格高騰で新電力の倒産・撤退が相次いだ

こうして多くの電力会社がスポット市場に依存していたが、これまでは電気を作るために必要な燃料価格が安いことから、スポット市場価格そのものも比較的安価で推移していた。

しかし2022年にロシア・ウクライナ問題が発生すると、円安の進行も相まって燃料費が過去最高値となる事態に。市場価格は30分単位で変動するため、燃料費高騰の影響を受けて値上がりしたが、電力会社は燃料費高騰を電気代にすぐに反映できないため、電気を売れば売るほど赤字になる「逆ざや」状態に陥った。

その結果、電気代が高騰するだけでなく、多くの新電力の倒産・事業撤退、契約解除、新規受付の停止が相次いだ。こうした背景もあり「前もって電気を確保する仕組みの必要性」が語られるようになり、中長期取引市場の設立に向けて国が動き出したのだ。

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電力会社は「電力の供給力確保(kWh)」も義務化される予定

結論をまとめると

電力会社にはこれまで「発電できる能力(kW)」を確保する義務があった。今回新しくできる制度は、これに加えて「実際に届けられる電気の量(kWh)」も、数年前から確保することを求める。3年前に必要な電気の50%、1年前に70%を確保する方向で話が進んでいる。

ここまで中長期取引市場の設立の背景を解説してきた。スポット市場の依存から脱却を図るべく中長期取引市場が設立される予定だと述べたが、それだけでは先渡市場のように取引されないリスクがある。

そこで今後、電力会社(小売電気事業者)には「供給力確保」が義務化される予定であることを知っておこう。ここからはその詳細を解説していく。

関連記事:電気代の燃料費調整額とは
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容量市場のkW確保だけでは実際の供給力までは保証できない

電力会社にはこれまで「容量市場」という仕組みを通じて、発電できる能力(kW)を確保する義務があった。容量市場とは、4年後に必要となる電気を発電できるだけの発電所のキャパを抑えておく市場のことだ。

しかし、発電所があっても燃料がなければ電気を作ることはできない。そこで発電所のキャパだけでなく、実際の電力の供給量(kWh)まで確保する「供給力確保」も義務化される予定なのだ。

 

供給力確保では、3年前に50%、1年前に70%の電力確保を求める予定

(出典:資源エネルギー庁「中長期取引市場の整備に向けた具体的な制度設計について」

供給力確保にあたって、経済産業省・資源エネルギー庁が示した案では、電力会社に対して、電気を使う年の3年前に必要な電気の50%、1年前に70%を確保するよう求める方向で話が進んでいる。

供給力の確保にあたって、中長期取引市場への参加は義務化されない方針だ。それ以外にも発電事業者との相対契約や自社発電所からの供給など、さまざまな確保手段があるだろう。

 

小規模事業者には3年前25%・1年前50%とする経過措置の案がある

電気の販売量がそこまで多くない電力会社については、負担を軽くするため、3年前25%・1年前50%まで基準を下げる案も出ている。

ただしこれは5年間だけの経過措置として検討されており、今後の話し合いによってはこの経過措置そのものがなくなる可能性もあるだろう。いずれにせよ、今後の動向を見守る必要がある。ここまでの話をまとめると以下のようになる。

区分

3年前

1年前

標準的な事業者

50%

70%

小規模事業者

25%

50%

 

 

 

中長期取引市場では、3年前と1年前の2回に分けて電力を取引する

結論をまとめると

中長期取引市場では「3年前に1年分」「1年前に1年分」という2つの商品が用意される予定だ。3年前の商品は1日を通じて一定量を届ける「ベース型」中心、1年前の商品は使う量が多い時間帯を中心とする「ミドル型」中心で話が進んでいる。売買の方法は、条件が合えばすぐ成立する「ザラバ方式」が軸になりそうだ。

ここまで、電力会社に新しく課される「供給力確保」の義務について解説してきた。

今後、電力会社側に供給力確保の義務があるとわかっても「具体的にどこで電気を確保すればいいのか」がわからなければ、電力会社は動きようがないだろう。そこで用意されているのが、まさにこの中長期取引市場である。

ここからは、この市場でどのような電気が、どのように売買されるのかを詳しく見ていく。

 

電力を取引する時期は、使用する年度の3年前と1年前の2回

中長期取引市場では、3年後に使う1年分の電力を、3年前と1年前の2回に分けて取引する。イメージとしては、3年前に中長期取引市場で大まかな電力量を確保し、1年前に微調整を行い、そして該当年度に電力を受け取るという流れだ。

また、電力が予約できるのは1年分に限られている。それ以降の年度については、またあらかじめ中長期取引市場で電力を抑えなければいけない。

 

3年前商品はベース中心、1年前商品はミドル中心で検討

また中長期取引市場で取引される電気の商品は、電気を供給する時間帯によって「ベース型」「ミドル型」「ピーク型」の3種類にわかれる見込みだ。

商品名

電力が供給されるタイミング

イメージ

ベース型

1日中

常に必要な電気

ミドル型

主に日中

日中に増える分の電気

ピーク型

使用量が特に多い時間だけ

最も需要が増える時間の上乗せ分

中長期取引市場では、3年前に取引される商品はベース型が中心で、1年前に取引される商品はミドル型を中心とする方向で検討が進んでいる。なぜこのような区分になっているのかというと、実需給に近づくほど、より細かく需要に合わせた商品を選べるようにする必要があるからだ。

3年前は大まかにベースとなる電力量を押さえる。そして実需給に近い1年前の時点で、より実態に近いミドル型の電力量を上乗せする。この2段階の調達をイメージするとわかりやすいだろう。

 

約定方法はザラバ方式を軸に検討が進んでいる

市場で取引が成立することを「約定」というが、中長期取引市場では、この約定方法にも2つのルールが設けられる方向で議論が進んでいる。1つが、売り注文と買い注文の条件が合った瞬間に都度取引を成立させる「ザラバ方式」で、もう1つが一定時間ごとに注文をまとめて受け付け、1つの価格でまとめて成立させる「板寄せ取引」だ。

中長期取引市場では、このうちザラバ方式を軸に検討する方針が示されている。取引の機会をできるだけ増やし、電力会社が必要なタイミングで電気を確保しやすくする狙いがある。もちろん、板寄せ取引を併用する可能性についても、あわせて検討が進められている。

 

 

中長期取引市場と容量市場とベースロード市場の違いとは?

結論をまとめると

中長期取引市場と容量市場とベースロード市場の違いは、確保する対象である。中長期取引市場は「実際の電力量(kWh)」を3年前と1年前から確保でき、容量市場は「発電できる力(kW)」を4年前に確保する。またベースロード市場は大型発電所の電力を確保するものだが、中長期取引市場の登場によって役目を終える方向に向かっている。

ここまで、中長期取引市場の取引に関する内容を解説し、中長期取引市場では取引の期間や回数、商品がわかれていることなどがわかった。

しかし、そもそも電力業界には「容量市場」や「ベースロード市場」など、似たような名前の制度がすでに存在しており、これらの違いを理解できない人も多いのではないだろうか。そこでここからは、中長期取引市場と容量市場やベースロード市場の違いを整理していく。

 

中長期取引市場は実際の電力量、容量市場は発電能力、ベースロード市場は大型発電所の電力を取引する

結論からいうと、中長期取引市場と容量市場とベースロード市場の違いは「確保する対象」だ。

中長期取引市場は「実際の電力量(kWh)」を3年前と1年前から確保でき、容量市場は「発電できる力(kW)」を4年前に確保することができる。またベースロード市場では、大手電力会社が所有する大型発電所で作られた電力を取引することが可能だ。まとめると以下のようになる。

市場名

確保するもの

取引期間

今後

中長期取引市場 実際に届く電気の量(kWh) 3年前・1年前 2028年度に取引開始

容量市場

発電できる力(kW)

4年前

継続

ベースロード市場

大手電力会社の電気へのアクセス

数か月前〜

役目を終える方向

よりわかりやすくいうと、中長期取引市場とベースロード市場が扱うのは電気そのもので、容量市場が扱うのは発電所のキャパ、つまり発電所そのものである。そのため、中長期取引市場が2028年にスタートしても容量市場が廃止されるわけではない。両制度は、それぞれの役割を担いながら並行して運用される見通しである。

その一方で、「ベースロード市場」に関しては今後終了する見込みだ。ベースロード市場は、大手電力会社が持つ電源へのアクセスを新電力に提供する目的で作られたが、今後は中長期取引市場がその役割を引き継いでいく方針で議論が進んでいる。

 

 

中長期取引市場のメリットは電気代が安定しやすくなること

結論をまとめると

中長期取引市場は、新電力にとっては電気の確保が安定する一方、契約の自由度や金銭面での負担が増える可能性がある。また企業にとっても、契約先の突然の撤退や電気代の突然の高騰の心配が減る一方で、調達にかかるコストが電気代に反映される可能性もある。

ここまで、中長期取引市場の仕組みや、既存の制度との違いを見てきた。それでは、この新しい市場ができることで、実際に新電力や、電気を使う私たち企業にはどのような影響があるのだろうか。ここからは、その影響を具体的に見ていく。

 

新電力は電力調達が安定する一方、自由度や与信負担が増える

まず新電力についての影響を解説する。中長期取引市場の新設による新電力のメリットは、電力調達の安定により、スポット価格の急激な値段変動に振り回されるリスクを減らせる点だろう。逆ざやリスクを抑えられれば、それだけ安定した事業運営が可能になる。

その一方、数年先まで契約を結ぶということは、それだけ長い期間、支払いや契約条件に縛られるということでもある。電気を売る発電事業者からすれば「この新電力はお金を払えるのか?」という信用度がこれまで以上に重視され、資本力が弱い新電力はこの市場に参加できなくなる可能性があるのだ。

 

電力需要家(法人・家庭)は、料金変動リスク・契約先の撤退が減る可能性が高い

次に、電力需要家(電力を使用する法人や家庭)のメリット・デメリットを見ていこう。まず、需要家のメリットは大きく2つ。1つが電気代の価格変動リスクが減ること、もう1つが契約中の電力会社の事業撤退リスクも減ることである。

契約先の電力会社が、数年先の電気を計画的に確保しやすくなれば、その電力会社が急に事業をやめてしまうリスクや、燃料価格の急変動がそのまま料金にはね返るリスクは、これまでより下がる可能性があるのだ。

 

長期調達コストが私たちの電気料金に転嫁される可能性もある

ただし、電気代の値上げそのものがなくなるわけではない点には注意したい。それどころか価格の急変動はなくなるものの、中長期取引市場でかかるコストが電気代に上乗せされる可能性は十分に考えられるのだ。

中長期取引市場は、電気代を下げることよりも安定させることを目的に置かれている。現時点では、この市場で取引される電気は、発電所の建設費や維持管理費といった固定費まで含めて価格が決まる想定になっており、もしかするとスポット市場で仕入れた場合よりも、電気代が平均して高くなる可能性もあるのだ。

しかし、実際に私たちの電気代にどのような影響を及ぼすのかは、現時点ではまだ見通しを立てることができない。電気代が安定し、かつ安くなることがベストではあるが、こうしたリスクもあることを理解しておこう。

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中長期取引市場は2028年度の取引開始を想定している

ここまで、中長期取引市場で考えられるメリットやリスクについて解説してきた。中長期取引市場は2028年度の取引開始を目指し、今、ワーキンググループによって細部の検討が行われている。

商品設計や入札方法などの詳細は今後詰められていく予定だが、中長期取引市場が開始されれば、電力需要家はより安定した電力供給が可能になる可能性が高い。当社も電力小売事業者として経過を見守り、今後も詳細が決まり次第、この記事の内容を更新していく。

 

 

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